CEFRの4技能・5領域に分けて社員育成を考える
The Common European Framework of Reference for Languages (CEFR)という言語能力の指標はヨーロッパ発祥ですが、日本でも浸透しました。A1, A2, B1, B2, C1, C2という6つのレベル分けがされていることまでは多くの方々が認識されています。しかし、このレベルについて話をするときに、4技能・5領域に分けて話をすべきであることを理解している方は少ないように感じます。CEFRをよりよく理解し、社員育成計画を立てるために今日の記事をお役立ていただけますと幸いです。
CEFRはCan Do Statementsで構成されています。これらはDescriptors(特徴を説明するもの)と呼ばれており、あるCEFRレベルの人がどのようなことができるか、または具体的に何かをどの程度できるかを定義したものです。全ての項目のCan Doを読んでいき、当てはまるものにチェックをつけていけば概ねどのレベルにいるかがわかるようになっています。日本語化されたCan Doの資料をご参照ください。
Can Do Statementsの項目数は非常に多く、そして4技能・5領域に分かれています。4技能はおなじみのListening, Reading, Speaking, Writingのことですが、5領域であるのはSpeakingが2つに分類されているからです。一方的に話すSpoken Production(発表)と相手ありきの会話であるSpoken Interaction(やりとり)に分かれています。
Spoken Production(発表)はいわゆるスピーチやプレゼンテーションのことです。相手の反応とは関係なく、どれだけ的確に内容を伝えることができるかの能力を指します。Spoken Interaction(やりとり)は相手の反応に応じて展開されていく会話のこと。ときには相手を傷つけないように間接的な表現を使ってコミュニケーションをとることが好まれることもあるでしょう。そのような戦略的なコミュニケーション力も含みます。各領域別に各CEFRレベルのCan Do Statementsが定義されています。

各領域別のCan Doに自分が英語でできることを照らし合わせていくと、多くの人が5領域でのCEFRレベルは異なることに気づきます。たとえ同じスピーキング力であってもSpoken ProductionはB2レベル、Spoken InteractionはB1レベルだというように、自分の力にレベル差が生じていることが多々あります。
Spoken Production(発表)は辞書を引いてスクリプトを準備し、練習に時間をかけてプレゼンテーションを行い、場数を踏んでいけばどんどん力がつきます。しかしSpoken Interaction(やりとり)は相手ありきです。どんな相手との会話であっても、相手が伝えようとしていることを適切に理解しながらコミュニケーションを進めるのは大変です。ときには相手が本心ではないことを言っていることを文脈から理解する必要がありますし、皮肉を言葉のとおりに受け取ってはいけません。自分が勘違いしていたことに気づかない場面も多いので、相手ありきのコミュニケーション力を磨くことはかなり難しいものです。そのため、スピーキング力の2領域でレベル差があるのはごく自然なことです。
このように一人一人の能力は技能と領域によってバランスが異なります。つまり、ある人の英語力について包括的に議論をするときにも5領域に分けて具体的に話さないと意味をなさないのです。日本の学校教育でもこのような視点が取り入れられるようになり、2022年度から高校では「話す」ことを2つの領域に分けて考える計画がたてられました。こちらの文部科学省の資料[資料3 学習指導要領の改訂等について]p. 2をご参照ください。
今まで「スピーキング力」と一つの言葉で表現していたことをCEFRの領域に合わせて表現していくように日本の英語教育が変わってきています。ビジネスシーンにおいても、社員が「英語で何ができるのか」を考えるときに、「アウトプット力」と一言でまとめてしまうことのないように気をつける必要があると言えるでしょう。CEFRの4技能・5領域の考え方を参考に、どのように英語力を細分化して自社の社員の能力を測るべきかをご検討されると具体的な社員育成計画が立てやすくなります。

コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジ修士号取得。外資系コンサルティングファーム勤務を経てから株式会社アルクと楽天株式会社にてビジネスパーソンの英語教育に従事。さまざまな英語スピーキング試験の試験官資格を有する「英語力評価」の専門家。著書に『ロジカルに伝わる英語プレゼンテーション 』などがある。