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脳科学から考える英語学習のコツ:「インテイク」

2022/06/15

前回は私の中国語学習の経験を踏まえ、インプット時の学習活動を変えれば、言語習得時間を圧倒的に短縮できることをお伝えしました。今回は理論的にその理由をお伝えします。


一般的にインプットとアウトプットがセットで語られますが、実はその過程にインテイクというプロセスがあります。新たな知識を内在化するプロセスです
例えば、音であればどのように発音するのかを頭で理解し、口の形や舌の位置などを意識してできるように工夫するといった時間が必要です。つまり、自ら新しい知識を取り込み、「自分のものにする」ことがインテイクの過程で起こります。


例えば、先生の話を聞いたり、板書されたことをノートに写したりしているのはインプットです。考えないでもできることだからです。
その一方で、私が中国語の授業でやってきたインプット時の課題はインテイクを促しやすい活動ばかりでした。特に先生からのフィードバックが届くと、自分が誤認識していたことが次々に明らかになります。教科書の音読をしていて、自分では正しい発音だと思っていたことを先生に指摘されて、正しい発音をするために舌の位置を変えて正しい音を出せたら「自分のものにする」というステップを踏めます。教科書の書き写しも同様。正しく漢字を書き写したつもりでも、線が1本足りないと指摘されれば、修正できます。そして、インプットを正しくし直して、アウトプットへとつなげていくことができるわけです。


以下の図のように他人からのフィードバックと自分の「うまくできない」といった気づきがインテイクを促します。インプットをしているつもりでも必ず失敗が起こります。
日本の教育での一番の「インプットの失敗」は「忘れる」ことでしょう。赤い下敷きでテスト直前に短期記憶に入れても内在化されていないので、インテイクへとつながっていないので、アウトプットへもつながらないのです。


脳科学から考える英語学習のコツ

先生は生徒たちに「やらせる」ことを徹底しないとインテイクの機会を生み出せません。この違いが前回の記事「語学の近道:インプットはアウトプットしながら!」でお伝えした私が受けた中国語教育と日本で提供されている英語教育の一番の違いです。
日本の教育の美学は「先生が生徒に丁寧に知識を伝達する」(教師による生徒へのインプット)とされていました。生徒の役割は受け取った情報を覚え込むこと。受け取った知識を使って議論したり、何か新たな価値を創造することは求められてきませんでした。そのため、語学でも自分で創出する活動が極端に少ないと思います。


インテイクの不足は、宿題や課題の形がもっとアウトプット型のものになれば変わるはずです。しかし、学校教育でそのような経験をしてこなかったので、大人になってから自ら学習習慣を変えるしかありません。
長年の習慣を変えることは非常に大変ですが、インテイクがないとアウトプットにはつながらない!ということを肝に銘じて、インテイクのためにインプット時は書く・話す活動を加えることを意識してください。 Good luck with your studies!


江藤友佳

コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジ修士号取得。外資系コンサルティングファーム勤務を経てから株式会社アルクと楽天株式会社にてビジネスパーソンの英語教育に従事。さまざまな英語スピーキング試験の試験官資格を有する「英語力評価」の専門家。著書に『ロジカルに伝わる英語プレゼンテーション 』などがある。

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